「フレイル」という言葉、聞いたことがありますか。年を取るにつれて体力が落ち、健常から要介護になる中間の段階を指し、医療や福祉などの分野でよく使われているそうです。
語源は英語の「frail」。日本語に訳すと、「もろい」や「虚弱」になります。
日本では今、「人生100年時代」も注目を浴びるなか、年を取っても健康を保ち、高齢者の自律を支援する動きが加速しています。
高齢社会に直面しているのは、日本だけではありません。オーストラリアでも高年齢の方々が増え、シドニーやメルボルンなどの郊外では高齢者の人口は今後、倍増する見込みです。
オーストラリアでは現在、約360万人(人口の16%)が65歳以上。そのうちの半分が、要介護になる可能性が高いと予測されています。今後、この方々にどう、適切な医療サービスなどを提供するか、知恵の絞りどころです。
そんななか、南オーストラリア州にあるアデレード大学が着目したのは、フレイル人口の見える化。人口推計などのデータに基づいて、要介護になる見込みの人はどこに住んでいるかの分布図をつくり、このほど公開しました。全国規模で随時更新される「フレイル・マップ」を出したのは、アデレード大学が世界で初めてだといいます。
地図には個人や地方自治体、医療関連の企業など、だれでも自由にアクセスできるとのことです。要介護の予備軍が多い地域では、健康意識を向上させるキャンペーンを実施したり、医療施設を強化したり。事前にあらゆる対策を講じ、要介護の人口を減らすことができます。
土地が広いオーストラリアは、病院やスーパーへの距離が遠く、フレイル予防は喫緊の課題。1874年設立のアデレード大学はオーストラリアを代表する研究が盛んな大学として有名です。今回のフレイル・マップのように研究の結果を生かし、社会問題の解決に寄与しています。
【この記事は、2019年秋に公開したフェイスブック投稿を再構成したものです。】