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空気から飲料水つくる仕組み開発 世界の水問題解決に新風

9月も終わりに近づいて暑さが和らぎ、気持ちいい晴れの日が続いています。蒸し暑い日本の夏と違って、アメリカ南西部アリゾナ州はほとんど雨が降らない、カラッとした暑さが特徴だそうです。州都フェニックスの年間平均の降水量は約200ミリメートルと東京の8分の1で、同市は「太陽の谷」とも呼ばれています。

そんなフェニックスにキャンパスを置くアリゾナ州立大学(ASU)の研究者の一人が、太陽光を使い、空気を水に変える仕組みを開発しました。ASU工学部の准教授で、自分で立ち上げたスタートアップ企業「ゼロ・マス・ウォーター」を率いるコディ・フリーセンさん。仕組みはソーラー(太陽光)パネルにちなんで「ハイドロ(水)パネル」と名付け、空気から水分を集めてタンクに貯めます。そして、その水にマグネシウムやカルシウムなどを加え、飲料水として完成させます。必要なエネルギーはすべて太陽光でまかない、電気いらず、パネルを置くだけで空気から水をつくれるという革新的なものです。

フリーセンさんのハイドロパネルは今、30か国以上で使われ、きれいな水にアクセスしにくい場所や震災などによって断水した地域などで活用されているとのこと。ゼロ・マス・ウォーターのウェブサイトでは、二つのパネルを設置すれば、毎月、最大600本のボトル(容量500ミリリットル)をつくれると説明しています。

国際連合児童基金(ユニセフ)によると、安全な水を手に入れられない人は世界で6億人以上にのぼります。そんななか、ハイドロパネルは大きな注目を集め、フリーセンさんはこのほど、マサチューセッツ工科大学(MIT)が発明家を対象に授与する「Lemelson-MIT賞」(賞金は50万米ドル=約5400万円)を受賞しました。アリゾナ州立大学の教員がこの賞を受けるのはフリーセンさんが初めて。賞金を使い、雨量が少ないコロンビア北部の地域にハイドロパネルを無償で提供するといいます。

実は、アリゾナ州立大学はイノベーションを起こす教育機関として名が高く、「アメリカで最も革新的な大学」(U.S. News & World Report, 2019)では1位に入りました。フリーセンさんのように、起業して社会問題の解決に貢献する人も増え、研究をビジネスにつなげやすい環境が整っています。

アリゾナ州立大学について詳しくはこちら

【この記事は、2019年秋に公開したフェイスブック投稿を再構成したものです。】