東南アジアなどのジャングルに、スローロリスという動物が生息しています。原猿の仲間で体長は約30センチメートル、小さい顔にやや不釣り合いの大きな瞳を特徴としています。昼間は寝ていて夜になると、果物や昆虫の食料を探す活動を始めるのですが、非常にゆっくり動くので「スロー」と名付けられたそうです。
そんなスローロリスですが、人間の言葉でいうと、とても社交的。よく群れの仲間と集まったり、同じ所で寝たりしています。しかし、鳴き声を出さないので、仲間とどのようにコミュニケーションするのか、今まで知られていませんでした。
最近、その謎を解いたのは、動物の行動について研究が盛んなイギリスのオックスフォード・ブルックス大学(OBU)。スローロリスは人間の耳に聞こえない超音波でコミュニケーションをとるという仮説を立てて、超音波を可聴化する独自ソフトウエアを使い、インドネシアのジャワ島でスローロリスを観察しました。それによって分かったのは、スローロリスはコオロギにも似ている鳴き声を出し、人間に聞こえないだけで、実は活発にコミュニケーションしているということです。
OBUによると、超音波を使う動物は極めて少なく、それに関連する研究もまだ不十分ですが、今回の結果を生かし「無音だがよく話す」動物の理解を深めたいとしています。
近年は、さまざまな生き物が存在する地球の生物多様性を守る動きが加速しています。そのなか、動物の行動やコミュニケーションについてより多くの知識を得て、人間との共存を目指すことが重要といえそうです。
【この記事は、2019年秋に公開したフェイスブック投稿を再構成したものです。】