K・Hさん
2022年9月からイギリスのイーストアングリア大学修士課程「MA Creative Writing Poetry」に留学中。
イーストアングリア大学へ留学中のK・Hさんからのリアルな留学体験談を連載でお届けします!
今回は、9月下旬から本格的に始まった大学院での授業の様子について詳しくお伝えします。
大学院留学をご検討中の方やイーストアングリア大学に興味がある方はぜひお読みください。
現地から留学体験レポートをお届けします!
みなさん、こんにちは。イギリスでは10月末でサマータイムも終わり、太陽が沈むのが早くなり、木も色鮮やかに紅葉しています。
今月は9月下旬より本格的に始まった授業の様子についてお伝えしたいと思います。
授業開始!課題や詩の創作に忙しい日々
Welcome Week(新入生歓迎ウィーク)も終わり、本格的に授業が開始となりました。私の大学では学期が秋学期と春学期の2学期制となっていて、修士のコースでは春学期までにすべての科目を履修し終え、最後に修士論文を書いて提出するという形をとります。授業の数は学部によってさまざまですが、私のコースは1学期に3時間の授業が2コマあります。毎週月曜日と火曜日の14時から17時までキャンパスのさまざまな建物で行われる授業へ向かいます。
授業が2つだけと聞くと少なく感じられるかもしれません。しかし、1つの授業で出される事前課題をこなすのに4時間ほどの時間を費やしますし、さらに授業で紹介されて興味を持ったことや、自分が元々興味を持っていることへの勉強の時間も確保するとなると決して暇ということはありません。また、わたしは詩を書くためにこのコースに入学したので、ひたすら書くことと向き合う時間もとれるように心がけています。
授業についてですが、私のコースでは講義形式のものはなくすべてワークショップ形式のものです。この形式が成り立つように、学生は2グループに分けられ、1グループおおよそ8~10人で構成されています。人数があまり多くないため学生一人一人に発言する時間があり、気軽に質問もできます。じっと座って受動的に話を聞き続けることが苦手な私にとってはとても学びやすい環境です。
また一緒に学んでいるクラスメイトは皆熱心で意欲的なので、授業後などもパブに向かい、議論を続けることもよくあります。
ストレスなく表現できる環境づくり
授業の1つに詩のワークショップがあります。これはCreative Writingのコースにとって、最も重要で本質的な授業です。この授業は各々が書いた詩を発表し、合評する場です。
合評では、詩の中で自分では気が付けなかった点や、うまくいっていないと感じているけれども、どうすればよいのかわからない部分などを明らかにすることができます。もちろん、詩の読み方に対して矛盾する意見が出ることもありますが、それらを含めて、どのように改めるかを考えることがこの授業の一番の目的だと思います。
合評は詩の授業においてよくあるスタイルではありますが、それでも自分が書いたものが読まれるというのは多くの人にとってはとても緊張する体験です。最初の授業ではみんなとても不安そうにしていました。そこで、合評が始まる前に合評においてのルールや必要な配慮について話し合いました。例えば、「他人の詩を教室外に持ち出さないこと」「好き、嫌いだけではなく、意見は建設的な形に変えて伝えること」「思いやりを持って合評すること」などが上がりました。
日本の大学でも、合評の場でのルールは存在しましたが、学びの場を安全なものにしようという意識はイギリスの方が強く感じられるような気がします。私は作品の合評に限らず、教室がセーフスペースであってほしいと強く願っています。どんな発言も、どんな疑問も、どんな詩もためらわずに表現できるような安全で思いやりがある空間を作り上げるために、必要な努力は続けなければいけないと感じました。
学びの環境を整えるためにもう一つ行っている工夫があります。それは、みんなでクッキーや小さなケーキを持ち寄り、食べながら授業を進めることです。おかげで教室はいつも甘い匂いとコーヒーの香りでいっぱいですが、脳への栄養補給も大切で、私も甘いものを食べながら授業を受けるといつもより集中できる気がします。
また、3時間の授業の途中には必ず15分ほどの休憩が入ります。足を延ばすために教室の外を一周お散歩し、近くのカフェにコーヒーを買いに行くこともできます。私のお気に入りはテリーズのオレンジチョコレートです。もちろん、おやつやコーヒーのために授業に向かっているわけではないですが、毎週のちょっとした楽しみになっています。
コース以外に文芸翻訳の授業を聴講
私は詩の中でも特に多言語詩(Multilingual Poetry)について学びたいため、翻訳にも興味があります。そのため、専攻しているコースの授業に加えて、文芸翻訳のコースで開講されているTranslation Theory and Historyという、翻訳の理論と歴史について学べる授業を1つ聴講しています。こちら授業については大学のオンラインシラバスを確認したり、人づてに聞いたりして、見つけました。
もちろん、自主的に翻訳について学ぶこともできますが、私の場合、授業に参加することほど楽しく何かを学べる方法はありません。先生の講義やクラスメイトとのディスカッションを通して、自分一人ではたどり着けない視点や考え方に触れ合えた時に私は大きな喜びを感じます。
授業の聴講をしたい場合は、まず担当の先生に連絡を入れることが一番です。イーストアングリア大学の先生方は聴講生や学びたい学生を寛大に受け入れてくれます。聴講に追加料金などはかかりませんし、レポートやプレゼンテーションなどはやらなくて済む場合も多いですが、聴講させてもらう上で、必要最低限のリーディングはやっておいた方がよいと思います。授業の中で、先生方はさまざまなイベントや大学のリソースも紹介してくれるので、困ったときに相談できる存在としてとても心強いです。
ただコースで出された課題をやっているだけでは学びたいことは学びきれません。先生やクラスメイト、授業からできるだけ多くを吸収するべく、これからもしっかりと勉強に励んでいきたいと思います。また、普段は自室で勉強することが多いですが、気分を変えてキャンパスで勉強をすることもあります。図書館は24時間開放されているので、どんなに夜遅くても気になったことがあればすぐに調べに行けてとても助かっています。
読んでくださった皆さまへ
今回は、大学院特有の授業の様子についてお伝えしました。今回のテーマから少し話が逸れますが、先日大学で開催されたパンプキン・カービング(ハロウィンのカボチャの飾り、ジャック・オ・ランタンの顔を彫るイベント)に参加した時の写真をシェアします。季節ごとにたくさんの楽しいイベントが大学で開催されるので、学ぶこと以外にも目を向けながら、楽しく過ごしていきたいです。
次回は、大学のお休みを使って行ったノリッチからパリへの小旅行についてお伝えできたらいいなと思っています。
イーストアングリア大学について
イーストアングリア大学(University of East Anglia)は1963年に創立された、イギリスのトップ大学の一つ。多くの研究分野での高評価はもちろん、学生満足度が高い点でも知られています。教育・研究については「創造」を重視しており、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏をはじめ、数多くの著名な卒業生がいます。