今回のケンブリッジ大学留学記では、ケンブリッジ大学での生活全般について、ケンブリッジ(およびオックスフォード)に特有のカレッジ制に着目しながらご紹介したいと思います。
カレッジ制が形づくるケンブリッジの暮らし
日本の大学のイメージからすると少し分かりにくいのですが、ケンブリッジ大学の最大の特徴として、カレッジ制があります。
そもそもケンブリッジ大学は、東京大学や慶應義塾大学のように一つのキャンパスの中にさまざまな学部が集まっているわけではなく、ケンブリッジという街の中にある31のカレッジから成り立っています。
このため、「ケンブリッジ大学キャンパス」という特定の敷地や建物があるわけではなく、街の中にカレッジや学部の建物が点在しており、いわば街全体が半ば大学のような様相を呈しています。
カレッジは、歴史的には学生に対して “food and shelter” を提供する場として発展してきましたが、現在ではそれに加えて、主に学部生に対してチューター制度を通じて生活・勉学のサポートを行う役割も担っています。
MBAではチューターを利用することはほとんどありませんが、学生はそれぞれいずれかのカレッジに所属し、食事や住まいについてはカレッジを大いに活用することになります。
各カレッジが学生寮(アコモデーション)を保有しており、歴史的な建物の一角にある主に学部生向けの部屋や、郊外の世帯向け物件などの中から、自分に合った部屋を選ぶことになります。
これらの部屋は民間の賃貸物件よりも割安なことが多い一方で、必ずしも希望どおりの部屋が取れるとは限らないため、アコモデーションが豊富なカレッジを選ぶことが鍵になります。
カレッジで味わう食事と社交の時間

食事についても、カレッジごとに食堂を有しており、値段・質ともにばらつきがあることから、カレッジ選びの要素の一つとなります。さらに、カレッジにおける最大の楽しみがフォーマルディナーとカレッジバーです。フォーマルディナーでは、カレッジの荘厳なディナーホールで三皿構成のコースディナーが提供され、ケンブリッジ・コミュニティの社交の場として機能しています。
グループで参加することが多いですが、異なる専攻やバックグラウンドを持つ参加者とたまたま同席になり、アカデミックな多様性の中から新たな着想が得られることも期待できます。
実際、MBAで出会ったさまざまな国籍の友人たちと、いろいろなカレッジのフォーマルディナーに参加できたのは、ケンブリッジならではの経験だったと思います。
また、その後には「2次会」としてカレッジバーに行くのが恒例でした。日本の感覚では少し驚きかもしれませんが、カレッジ内に学生専用のバーがあり、そこで市中よりも安価にビールやカクテルを飲むことができます。数年の社会人経験を経た身として、再び学生気分で「学生だけの空間」で飲むというのも、ケンブリッジ生活での印象的な思い出の一つです。

最後に、カフェを備えているカレッジも多くあり、そこでは市中とはまた違った、ゆったりとした雰囲気の中でコーヒーを片手に読書などを楽しむことができます。
こうしたアコモデーションの充実度やフォーマルディナーの質、カレッジ自体の歴史などを総合的に勘案してカレッジを選ぶことが、ケンブリッジ生活を自分らしく、かつ無理のない範囲で楽しむコツの一つと言えるかもしれません。
これらはなかなか外からは分かりにくい部分も多いため、何を重視するのかを整理しつつ、OB・OGに相談するのがベストだと思います。
