大河内 洋介(おおこうち・ようすけ)さん
2021年秋からイギリスのエジンバラ大学ビジネススクール修士課程マネジメントコース「MSc in Management」に留学中。
エジンバラ大学へ留学中の大河内さんからのリアルな留学体験談を連載でお届けします! 今回は、『異なるものとの調和と共生』というタイトルで、事前英語準備コース(プリセッショナルコース)から1学期終了までの様子について詳しくお伝えします。 大学院留学をご検討中の方やエジンバラ大学に興味がある方はぜひお読みください。
現地から留学体験レポートをお届けします!
皆さん、こんにちは。7月からエジンバラ大学ビジネススクールに留学している大河内洋介です。先日今学期の課題提出がすべて終わり、年明けの来月中旬まで冬休みに入ります。気が付けば渡英から5ヶ月が経過した中で、今回はプリセッショナルコースから1学期終了までを振り返りたいと思います。
非ネイティブの立場で必要な英語力を身に着ける
修士コースは9月スタートですが、私は7月に渡航しプリセッショナルコースから受講しました。修士コースに進学するためにはこのプリセッショナルコースを通過する必要があったため、私にとっては最初の関門となりました。授業は英語専門の先生が毎日3時間、オンラインと対面授業を交えてご指導くださり、多国籍のクラスの中で様々なディスカッションを経験できました。授業内容は第1回の体験談に詳しく記載しておりますが、修士コースで必要となる英語の言い回しの知識や盗作を防ぐための方法などを学ぶことができ、今となっては本コースの準備として最適なコースであったと思っています。9月からスタートした修士コースは、様々な国籍の先生からご指導いただくこととなり、話される英語の中にはなまりの強いものもありました。講義によっては1回では意味が理解できずに録画されたビデオを見返したり、授業を想定した予習をより入念に行う必要があったりと、ときにストレスを感じたところです。非ネイティブの学生の中には、完全に授業の内容を理解して次々と先生に質問をする方もいらっしゃり、その様子を横目にしながら悔しい思いをすることも少なくなかったです。また、各授業の提出課題の作成に当たっては、一部の作業で翻訳ソフトに頼ってしまうこともあり、英語力不足を痛感しました。
修士コースが始まってからは、なかなか英語力だけを伸ばす時間は確保できないので、可能な限り英語に慣れた上で留学すべきであったと感じています。ただし、こちらに来てから気付いたのは、事柄を説明する上では英語は必須ですが、感情を完全に表現することはほとんど不可能ということです。34年間日本で暮らしてきた者にとっては、日本人らしい感情を英語で表現することには限界があり、その点ではネイティブのように英語を話せる必要はないと割り切っています。いずれにしても、2学期には4つの授業と修士論文作成が控えていますので、英語力の向上はおよそ1か月間の冬休みの宿題と認識しています。
試行錯誤しつつ歴史ある街で学びを深める
授業内容は、各分野の基本的な知識を身に着ける内容が多かったです。私としてはクラス内でのディスカッションやケーススタディを通じて学びを深めることを期待していましたが、多数の学生に向けた授業である以上、常に満足できる内容とはいかないものです。ただ、先生方は非常に熱心にご指導くださるので、ときに研究室を訪ねて気になる内容を個別で教えていただいています。お忙しい中でも丁寧にお付き合いいただき、結果として期待感を満たすことができています。
提出課題は個人で取り組むものとグループで取り組むものの2種類があります。受験勉強のような正解はない中で、自ら問いを立ててなおかつ英語で考え抜くという作業は、1学期を通じても慣れることはできませんでした。最後は締め切り間際に徹夜をして提出することになり、もっと時間の使い方を工夫しなければいけないと反省しました。グループワークでは文化や年代の違いを感じながらも、クラスメイトそれぞれの持ち味が発揮されて面白かったです。
エジンバラ大学を代表する建物としてオールドカレッジがあり、一部の授業は毎週そちらで実施されました。グラハム・ベル(電話の発明者)やコナン・ドイル(小説家)などの名だたる卒業生も、同じ場所で勉強したのかもしれないと想像すると、自分も何か大きなことを成し遂げられそうな気持ちになってきます。エジンバラは大学やその周辺にも歴史のある建物が建ち並んでおり、先人たちの息遣いを感じながら生活できる点はこの街の魅力であると感じています。
異文化交流を通じて他者を受け入れる姿勢を養う
私の進学したコースは20代前半の学生が多く、10歳近く若い友人がたくさんできました。皆さんの向学心はおしなべて高く、英語力も目を見張るものがあります。先生方はある程度気を使った英語で話してくださいますが、友人たちは基本的に自分のペースで話すので理解できないこともあります。それでも、分からないことを正直に伝えるとより丁寧に説明してくれますし、私のつたない英語もなんとか解釈しようと耳を傾けてくれます。そうしているうちに、コミュニケーションにあたっては英語力もさることながら、腹を割って話し合える関係性を作ることや伝える内容はさらに大切であると気付かされました。
異文化交流の面白さや難しさも、こちらに来て実感したことの1つです。クラスメイトの皆さんは日本の漫画に驚くほど詳しく、どんなストーリーなのか私が教えていただくことすらあります。また、日本で流行った映画は海外でも上映されているものもあるようで、好きな映画の話題で盛り上がることもあります。文化も一つの共通言語と捉えたとき、自身の専門分野だけでなく様々な事柄に関心を持っておくと、留学先でより多くの方とつながりを持ちやすいと感じています。
一方で、相手国の思想や歴史に対する理解や敬意は、若さゆえか必ずしも十分なものとは言い難いように感じます。秋に日本で話題になったニュースを悪気なく揶揄されてしまい、浴びるほど飲んだ夜もありました。真心をもって人を大切にするためには、異なる者への想像力が不可欠であり、事象だけを捉えていては人を深く傷つけてしまいかねないことを実感しました。立場や身分を越え信頼の中で人々がつながるためには、自分の中にある前提や常識だけで思考してはいけないと身をもって学んだところです。
読んでくださった皆さまへ
プリセッショナルコースから1学期終了までのおよそ5ヶ月間を通じて、海外留学ならではの多くの機会に恵まれました。いくつもの困難に直面する中でも、その都度自分に問いを向けて自己対話を繰り返せていることは、今後に向けてとても良い経験になっています。特に、これからどのように社会の役に立つか、日本人としてどのように生きていくのか、他者を受け入れるとはどのようなことなのか等の問いに立ち止まって向き合い、生き抜く力を養える環境は本当に貴重であると感じています。
9月より開始した本連載につきまして、ここまでお付き合いくださりありがとうございました。来年も毎月配信したいと思いますので、今後の留学に向けて引き続き参考にしてくださいますと幸いです。皆様、どうぞお健やかに良いお年をお迎えください。
エジンバラ大学について
エジンバラ大学(The University of Edinburgh)は1583年に設立された歴史のある大学で、スコットランドの首都エジンバラにキャンパスを置きます。QS World University Rankings 2022では、世界16位に選出されたイギリス名門大学で、自然科学の分野でスコットランド最大規模の学部を有しています。同大学では300以上のコースが提供され、なかでも会計学、考古学、経営学、英語・英文学、工学、哲学、心理学などの25分野で高い評価を得ています。留学生の数も多く、国際色豊かな環境で学習することができます。コースは、教育水準がイギリス最高レベルと認識されている言語学や、100年以上の歴史を誇るスクールで学ぶMBA(経営学修士)、国際・ヨーロッパ政治、環境と開発などが支持を得ています。