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【英ケンブリッジ大学MBAコース留学記】戦略策定の仕事を目指す私がこのコースを選んだ理由と1年間の学習スケジュール

数々の世界大学ランキングでトップ3に入るケンブリッジ大学。その経営大学院であるUniversity of Cambridge Judge Business School(通称「Judge(ジャッジ)」)は、1990年に設立され、MBAコースをはじめとする数々の修士課程コースや博士課程コースなど、多種多様なプログラムを提供しています。

今回は、「The Cambridge MBA」というフルタイムのMBAコースを受講した、日本人留学生の体験談をご紹介します。留学のきっかけやなぜこの大学・コースを選んだのか、1年間の学習スケジュールなど、MBA留学にご興味のある方は必見の情報が満載です。

留学のきっかけ

勤めている会社で留学制度があり、同じ部署の留学経験者の先輩からとても良い経験になったという話を聞いていたため、留学に対しては元々憧れがありました。

私の会社では留学候補生の選考試験などが無いのですが、留学候補生に選ばれやすくなるよう、会社が補助している語学講座を受講したり、人事面談で上司に留学の希望を伝えたりしていました。

その甲斐あってかはわかりませんが、留学前年の8月下旬に留学の内示を受けることができました。

なぜイギリスを選んだ?

ビジネスの基礎知識やスキルを習得したかったため、エグゼクティブMBAではなく、通常のMBAコースを選びました。

会社の規定で1年制のプログラムである必要があったため、欧州のビジネススクールが主な対象となりましたが、まずは英語を習得したいという思いがあり、ネイティブスピーカーの生の英語に触れることができるイギリスを選びました。

実際、バス停でバスを待っている間に現地の人に話しかけられたり、タクシー乗車中に運転手と話したり、学校以外でも英語を話す機会が持てたことは良かったです。

また、電車に乗っているときなどは、周りの人がどんな話をしているのかを聞いて、ネイティブスピーカーの言い回しを学ぶよう心掛けていました。

※エグゼクティブMBAは、主に管理職・管理職候補や経営幹部が対象のコースで、全社レベルの意思決定や組織変革の推進など、高度なスキルに焦点を当てています。

なぜケンブリッジを選んだ?

ケンブリッジMBAはいくつかの特長がありますので、ご紹介したいと思います。

1年制プログラム

ケンブリッジのMBAは1年制のため、仕事から離れる期間を最小限にしながら、1年間でMBAの教育を受けることができます。その代わり留学生活はとても忙しく、授業の予習やグループワーク、レポート課題や試験勉強に追われながら、転職する人は就職活動も行うこととなります。

実際にケンブリッジでの1年間を終えてみて振り返ると、これまでの人生でもっとも密度の濃い充実した期間だったなと思います。

ダイバーシティ

私がMBAコースを受講した年は、受講生の97%がイギリス外からの留学生で、46か国から学生が集まっています。出身地域の構成もバランスが取れており、もっとも多い地域(Central/East Asia)でも全体の22%を占めるのみとなっていました。

出身業界もさまざまで、金融やコンサルティング業界だけでなく、産業界や政府機関で働いていた人や、エンジニアや医者をしていた人もいたりします。

生徒数は210人で、豊かなダイバーシティが確保されつつも、全員と知り合うこともできる丁度良いクラスサイズであることがケンブリッジを選んだ理由の一つです。 

カレッジの一つ「ダーウィンカレッジ」内にはケム川が流れています。各カレッジには庭師がいて、庭では四季折々の植物が綺麗に手入れされています。天気の良い日には庭のベンチで読書や友人とのおしゃべりを楽しんでいる人を見かけます。 

コラボラティヴな雰囲気

ケンブリッジMBAの説明会などで、アドミッションチームからケンブリッジMBAはコラボラティヴな雰囲気であることが特長と聞き、在校生や受験生からもその雰囲気を感じ、自分に合っていると思いケンブリッジを志望しました。実際に進学してみて本当にその通りだと感じました。

しっかりしていて落ち着いた学生が多く、日常の会話だけでなく授業中やグループワークでのディスカッションでも、相手の意見にしっかり耳を傾けたり、互いに協力し合ったりする雰囲気がありました。

理論と実践の組み合わせ

ケンブリッジMBAにはCambridge Venture Project(以下CVP)、Global Consulting Project(以下GCP)、Concentrationという3つのグループプロジェクトがあり、授業で学んだ理論を実際のビジネスプロジェクトで使う実践的な機会があります。

また、学生4~5人のグループで一つのプロジェクトにあたるため、文化・国籍・業種がさまざまなメンバーで協力し一つの成果物を作り上げるなかでチームワーク力を向上させることもできます。

カレッジ制

ケンブリッジでもっとも古いカレッジである「ピーターハウス」は1284年創立。MBAコース開始前の語学研修中はこちらに滞在しました。 

ケンブリッジ大学はカレッジ制度があり、学生はビジネススクールに所属すると同時に、31あるうちのいずれかに所属することになります。各カレッジは住居・食堂・図書館・運動施設などを所有しており、生活の基盤となります。

ケンブリッジのカレッジは大きく分けて「オールドカレッジ」(1284年~1596年設立)と「ニューカレッジ」(1800年以降設立)に分けられます。前者は格式高く、後者はアットホームな雰囲気という印象です。

カレッジによって雰囲気が大きく異なるため、MBAコース合格後にどのカレッジが自分に合っているかを考え、志望先を決めます(定員等の関係で必ずしも志望した場所に決まるわけではありません)。

この仕組みのおかげで、「ハリー・ポッター」に出てくるようなイギリスらしい体験ができること、ビジネススクール以外の学生と交流する機会があることも、ケンブリッジの魅力の一つです。

各カレッジのダイニングホールでは定期的に「フォーマルディナー」という晩餐会が開かれます。スーツやドレスにアカデミックガウンを着用して出席し、他学部の学生や教授と共にコース料理をいただきます。自分の所属するカレッジのフォーマルディナーに友人を招待することもできます。

授業紹介 ~Cambridge MBAの1年~

ここからは、実際に私がケンブリッジMBAで過ごした1年間のスケジュールをご紹介します。

10月~12月: Michaelmas term

10月から12月は「Michaelmas term」に区分されます。授業は必修科目のみで、会計・財務・ミクロ経済・統計・Management Praxisなどがあります。

※Management Praxisとは、自己と他人との関わり方や自己管理のスキルを開発していく授業のことです。

「授業までにstudy groupという5人の班で議論しておくように」という予習課題が出されることも多く、各自ビデオを視聴しケース課題等を読み問題を解いたうえでstudy groupで集まって議論し、その後に授業に参加する、という流れでした。そのため、予習負荷が高く、とにかく予習に追われる日々でした。一方、study groupでの打ち合わせでは、課題の議論だけでなく互いに予習で分からなかったところを教え合ったりして仲を深めることができました。

また、1学期目からCambridge Venture Project(CVP)というコンサルティングプロジェクトがあります。CVPでは、study groupごとにケンブリッジ周辺のベンチャー企業が割り振られ、企業の要望に応え市場調査や市場進出の提案を行います。財務や統計で学んだ内容を実際に使ってビジネスモデルを提案したり、Management Praxisの授業でチーム理論や文化的なビジネス慣習の違い等を学んだうえでCVPでチームビルディングを行ったり、1学期目からさっそく学んだ内容を実践できる機会がありました。

冬休み

12月下旬~1月上旬の間は冬休みですが、1月上旬締切のレポート課題もいくつかあるため、同級生と旅行に行ったり外国のクリスマスを楽しんだりしながら、執筆を行っていました。

個人的には外国人同級生との旅行が初めての経験でとても印象的でした。文字通り朝起きてから夜寝るまで一緒に過ごし英語で話すことで、仲も深まり、冬休みの間も英語のトレーニングを行うことができましたし、互いの文化についてじっくり話す時間が取れたことで、外国の文化について知るだけでなく、日本の文化についても気づきを得ることができました。

ケンブリッジ市内を流れるケム川では「パント」というボートで川下りを楽しむ人が多いです。奥に見えるのは「モードリンカレッジ」。 

1月~3月: Lent term

Michaelmasでは会計や統計などquantitativeな授業が多かったのに対し、Lent termからは戦略やマーケティング、交渉、コーポレートガバナンスなどqualitativeな授業が増えてきます。また、選択授業もLent termから始まります。

交渉の授業では、授業前にクラスメイトと模擬交渉を行ってから授業を受けることになります。2者間の交渉だけでなく、代理人を使った交渉や、5者間交渉、感情的な問題が含まれる件の交渉など、さまざまなタイプの模擬交渉を行います。そのなかには、米ワールドトレードセンター跡地の開発についての関係者間の交渉など実際に起こった複雑な交渉もありました。

実際のビジネスで交渉経験がある学生やネイティブスピーカーの学生とも模擬交渉を行うため、授業で学んだ理論だけでなく、同級生の交渉スタイルからも学ぶことが多かったです。 

4月

4月は「Global Consulting Project(GCP)」を1か月かけてフルタイムで行います。

前述のCVPが学校から割り振られたケンブリッジ周辺企業のプロジェクトに対応するのに対し、GCPでは国際的な企業のプロジェクトの中から興味のあるものに各自応募することができますし、自分で外部企業と交渉しプロジェクトをソースしてくることもできます。

そのため、興味のある分野が似た学生同士でフルタイムでプロジェクトに当たるため、授業と並行して行っていたCVPに比べ、密度や専門性が高い内容でした。 

5月~6月: Easter term

5月~6月のEaster termではマクロ経済やオペレーション等の必修授業と選択授業に加え、「Concentration」というグループプロジェクトがあります。

Concentrationは、財務やアントレプレナーシップ、サステナブルビジネスなど9つの分野から一つ興味のある分野を選択し、その分野で実際に働く人の講演を聞いたり、グループで調査・プレゼンを行ったりします。私はStrategy(戦略)のConcentrationを選択しました。

講演では戦略系コンサルティングファームで働く人から、海外戦略や環境戦略、さまざまな戦略策定フレームワークの使い方などの話を聞くことができました。グループワークでは企業を一つ選び、その企業の戦略策定を行う人にインタビューを行い、その企業の戦略策定方法を講演で学んだ内容と比較しました。

私は将来戦略策定に関わる仕事をしたいと思っていたため、さまざまな企業の実際の戦略策定方法を学ぶことができたことが有意義でした。 

左手に見えるのは、私の所属する「ダーウィンカレッジ」の図書館。ケム川でボート遊びをする人や泳いでいる水鳥を眺めながら勉強できるので、お気に入りの場所です。

7〜9月: Summer term

Summer termの間は授業が無く、インターン・個人プロジェクト・個人研究・International Business Study Tripなど6つの選択肢から一つを選んで行い、最終レポートを執筆します。私はInternational Business Study Trip(IBST)を選択しました。

IBSTは1週間のベルリン研修旅行で、午前中は企業が海外進出する際の課題など国際ビジネスについての講義を受け、午後はベルリンの企業を訪問するというプログラムでした。

企業訪問では、BayerやGoogleなどの国際企業だけでなく、クラフトビールのスタートアップ企業、難民支援NPOなどさまざまな分野・形態の団体を訪問しました。また、同級生とベルリン観光をするなど、最後のプログラムということで卒業旅行のような雰囲気もあり、楽しい思い出にもなりました。 

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