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【連載:留学体験談】大河内洋介さんが語る「30代からのビジネススクール留学体験」⑦正しいこと(2学期の授業、最近の所感)

大河内 洋介(おおこうち・ようすけ)さん

2021年秋からイギリスのエジンバラ大学ビジネススクール修士課程マネジメントコース「MSc in Managementに留学中。

エジンバラ大学へ留学中の大河内さんからのリアルな留学体験談を連載でお届けします!
今回は、『正しいこと』というタイトルで、2学期の授業の様子や留学生活を通して考えたことについて詳しくお伝えします。
大学院留学をご検討中の方やエジンバラ大学に興味がある方はぜひお読みください。

現地から留学体験レポートをお届けします!

皆さん、こんにちは。7月からエジンバラ大学ビジネススクールに留学している大河内洋介です。3月下旬からサマータイムが始まり、日照時間がだいぶ長くなってきました。こちらではめずらしく晴天の日が多く気分も上々です。今回は2学期の授業が終わったタイミングで、講義内容や最近感じていることを中心にお話ししたいと思います。

四苦八苦しながらグループワークを進める

2学期は全体的にグループワークの頻度が高く、履修した4科目中3科目でグループワークを行いました。2つは共同でプレゼンテーションを行うもので、残りの1つはドキュメントの作成です。チームメイトの出身はバラバラで、私は中国、台湾、タイの皆さんとご一緒しました。自由にメンバーを選べたので、気心の知れた仲間とグループを組みましたが、ビジネス経験や英語力の差からときに困惑することもありました。

留学前コンサルタントとして働いていた私にとっては、まずゴールを設定してそこに向けて合理的に進めることが当たり前でしたが、なかなかゴールという言葉の意味するところが伝わらず、ややストレスに感じることもありました。また、私の英語力が他のメンバーよりも不足していたことから、意図することを正確に伝えられなくてもどかしい思いをすることも多かったです。

作業に対する姿勢も人それぞれで、とにかく思いついたことを何でもやってみようという考え方の人もいれば、私のように極力無駄な作業を避けたがる人もいて、チームの一体感を保つことに苦労したこともありました。最終的な成果はそれなりに質の高いものでしたが、残念ながらプレゼンのスコアは伸び悩んでしまいました。うまくいったチームと比べると、それぞれのパートの完成度もさることながら、ストーリーとしての一貫性やグループ内の適切な役割分担、与えられたテーマに対する回答の十分さなどが足りなかったように思います。

日本では、それなりに似たような経験や考え方をしている人とばかり付き合っていたので、異なる姿勢をどのように受け入れるか、その中でどのように最適解に近づいていくかは常に考えさせられました。もし2学期開始時に戻れるのであれば、留学の動機や学生として成し遂げたいことなどを腹を割って話しますし、もっと本音で議論すると思います。不要な衝突は避けるべきですが、対立を恐れるあまり妙に気を遣い合ってしまった面は否めません。お互いにアイデアを出し合って持ち味を発揮しあうのは大切ですが、その前提には深い相互理解があることを身をもって学びました。

修士論文を意識しながら講義を受講する

今年の大まかなスケジュールは3月までが授業、4月は提出課題作成、5月以降は修士論文執筆です。修論は15,000単語という少なくない量をおよそ3ヶ月で仕上げることになるので、事前にどの程度必要な知識を得て、進め方の方向性を定めておけるかがカギになると思っています。執筆の様子は次回以降お伝えしますが、テーマが決まると授業で説明される内容についてどの程度理解すべきか、どのような角度から検討すべきかが見えてきます。

私の場合は、組織論とサービスマネジメントの横断的研究をテーマを絞って行う予定です。パーパス、バリューの共創、プロミスの定義などがキーワードになる中で、そうした概念を意識して受講すると修論に即した問いが浮かんできます。現在所属しているマネジメントコースは薄く広く経営学全体を学ぶ内容で興味は尽きませんが、ある程度視点を絞って検討することで結果として授業の理解が深まるように思っています。

ウクライナ情勢をめぐる動きの中で考えたこと

2月のロシアによるウクライナ侵攻以来、大学内外ではいくつかの動きがありました。大学内では、ウクライナ人とロシア人学生の(主に精神面の)ケアのために、大学主催の集まりが開かれました。また、市内ではデモが行われ、当局から安全に気を付けるよう注意喚起のメールが届きました。

学生の間でも話題に上り、バーで国籍の異なる友人たちと飲んだ時にはかなりの激論になりました。戦争は絶対的に悪であるという考え方や、そうは言っても現在の国際システムが引き起こした問題であるという意見、他地域の情勢に応用するのは安易であるという見方など、人や出身地によって様々な視点がありました。

私が留学をして良かったと感じることの1つに、ひとりの人間として自分とじっくり向き合えている点があります。前職の社員、コンサルタントなどのこれまでの肩書を取り払って、多様な人々と交流する中で、自分の生き方が問われているように感じています。身近な経験では、クリスマスの時期に、友人や恋人と過ごす人々が街を行きかう中で、ホームレスの女性が路上に座り込んでいました。果たしてここでわずかな金銭を渡すべきか、とりあえず声をかけるべきか、トラブルに巻き込まれないために素通りすべきか、もっと根本的な問題の解決に取り組むべきかなど、正しい選択は何なのかを考えさせられました。

ウクライナのことも含め、日本の内外をめぐる情勢が今後もめまぐるしく変化するであろう中で、今回の留学で得た経験や考えたことは、自分の軸を作り前進するきっかけになると思っています。いくつかの経験を得た今、絶対の正解のない世界においても「人として正しいことは何なのか」という広大かつ深遠な問いに常に向き合うことを決めました。

読んでくださった皆さまへ

今回は2学期の授業を踏まえた感想や最近考えていることをお伝えしました。私の拙い意見はともかくとして、留学という非日常の経験を通じて、日本での生活では感じないことや考えが及びにくいテーマにも、きっと向き合えると思います。今年留学を目指される方は様々な準備が佳境を迎える時期かと思います。異文化から多くの刺激を得ている姿をイメージしつつ、悔いのないよう取り組まれることを願っております。

エジンバラ大学について

エジンバラ大学(The University of Edinburgh)は1583年に設立された歴史のある大学で、スコットランドの首都エジンバラにキャンパスを置きます。QS World University Rankings 2022では、世界16位に選出されたイギリス名門大学で、自然科学の分野でスコットランド最大規模の学部を有しています。同大学では300以上のコースが提供され、なかでも会計学、考古学、経営学、英語・英文学、工学、哲学、心理学などの25分野で高い評価を得ています。留学生の数も多く、国際色豊かな環境で学習することができます。コースは、教育水準がイギリス最高レベルと認識されている言語学や、100年以上の歴史を誇るスクールで学ぶMBA(経営学修士)、国際・ヨーロッパ政治、環境と開発などが支持を得ています。