K・Hさん
2022年9月からイギリスのイーストアングリア大学修士課程「MA Creative Writing Poetry」に留学中。
イーストアングリア大学へ留学中のK・Hさんからのリアルな留学体験談を連載でお届けします!
今回はK・Hさんが7月に参加した詩のリトリート(執筆合宿)と翻訳サマースクールについてお伝えします。
大学院留学をご検討中の方や海外生活に興味がある方はぜひお読みください。
現地から留学体験レポートをお届けします!
みなさん、こんにちは。7月はイベントが盛りだくさんで、あっという間に過ぎ去っていきました。今月はスペインのタラゴナという街で参加したライティング・リトリートについてと、大学で開催された翻訳のサマースクールについてお伝えしたいと思います。
スペイン・タラゴナで創作活動に没頭
2週間のライティング・リトリート
7月頭に大学主催のライティング・リトリートに参加しました。ライティング・リトリートとは作家や物書きが日常生活から離れて、執筆に集中するためにどこかへ籠ることです。今回開催されたのはスペインのタラゴナという街で2週間執筆をするために滞在するというものでした。
今回のイベントには、私と同じ学部で創作に携わっているさまざまな学生が応募しています。詩のコースからは私ともう一人、他には映画や演劇の台本を書くスクリプト・ライターや、小説家、ノンフィクション・ライターなどが数名ずつ集まりました。基本的に決まったスケジュールはなく、宿泊先や提携している大学の図書館、市立図書館などで各自取り組んでいるプロジェクトを進めます。
私は、卒業制作として提出する詩集をこのリトリートで進めていました。日中は一人で創作を続け、昼食や夕食時にはみんなで集まってごはんを食べたり、作品を読み合って合評する時間を設けたりしました。
自分とは全く異なるジャンルで作品を書いている人たちの話を聞くのは大変面白く、詩人だけではない場での朗読や合評もいつもの授業とは違った意見をもらえてとてもうれしかったです。すてきな友人たちもでき、本当に楽しいリトリートとなりました。
タラゴナでの生活
プロジェクトの執筆とは別に、このライティング・リトリートではもう一つの目的がありました。日常生活と離れたところでどんな作品が生み出せるか、違う文化の吸収はどのように創作物に影響を与えるか、自ら実践して検証するという目的です。そのため、宿泊先に籠ってひたすら書き続けるだけではなく、タラゴナの街を散策し、スペイン語・カタルーニャ語と触れ合うことも意識して行いました。
タラゴナはスペインのカタルーニャ州に属しており、スペイン語だけでなく、カタルーニャ語も公用語です。どちらも全くわからず到着してしまった私は、コミュニケーションをとるのに大変苦戦しました。
もちろん、2週間過ごしたからといって、多くを身につけられるわけではありませんが、挨拶や簡単な注文など、質問の仕方を覚えることはできました。まったく言語がわからない場所への旅行を経験したことがなかった私は、体の動きや表情がコミュニケーションの大きな役割を担っていることを再確認できました。
タラゴナは海辺にある街なので海鮮が大変おいしく、いつも生活しているノリッチでは食べられないお魚料理を楽しみました。スペインの食生活には大変満足したのですが、一つ困ったのが、食事の時間の違いでした。
スペインでは昼食と夕食の時間が遅く、お昼は14時から15時頃、夕食は20時から21時頃に始まることが多く、レストランもその時間帯からしか開きません。早寝早起き生活に慣れていた私は、お昼の12時ごろにはお腹がすき、夕食が終わる23時頃にはもう眠たく、この生活に慣れるのに少し苦労しました。
また、タラゴナの地域は大変暑く、湿気も多く、日中あまり長く外にいることができません。しかも宿泊先にはエアコンがなく扇風機しかなかったため、夜眠るのが大変でした。スペインのタラゴナに旅行や留学に行く皆さまは、ぜひ暑さ対策をしてください。私は塩分補給のため、毎日スーパーで買ったペットボトルのガスパチョ(トマトの冷製スープ)を飲んでいました。
世界中から作家や翻訳者が集うサマースクール
スペインでのライティング・リトリートから帰国し、1週間の休息をとるとすぐ、私が楽しみにしていた翻訳のサマースクールが始まりました。このサマースクールは私の大学に付随しているBCLT(British Centre of Literary Translation)という文芸翻訳の研究センターが主催しており、世界のさまざまな場所から言語の作家や翻訳者を呼び、一つのテクストを翻訳するワークショップ形式のサマースクールです。
アラビア語、フランス語、日本語、韓国語、台湾の文学、多言語の詩、多言語の散文などのグループがあり、1週間、朝から晩までスケジュールが入っています。みっちり翻訳について考えるので、とても大変でしたが、楽しい経験となりました。
私が参加した日本語・英語の翻訳グループは、私が日本にいた時からずっとお世話になっている先生がワークショップリーダーだったため、ノリッチという場で再会できて大変嬉しかったです。
他にも、さまざまな場で出会ってきた友人たちが参加していたり、同じ興味を持った友人が新しくできたり、たくさんの人との交流がありました。日本語・英語の翻訳グループの中だけではなく、言語の垣根を越え、さまざまな翻訳者と知り合うことができました。
最終日には、1週間かけて取り組んだ翻訳を発表する場があったのですが、そこでは様々な言語特有の魅力や翻訳における問題点などが学べて大変面白かったです。私は日本語と英語の2つの言語しか行き来をすることができませんが、たくさんいる翻訳者のおかげで、またこのような場のおかげで、私がわからない言語でも触れられる形に変わるのだなと感嘆しました。
読んでくださった皆さまへ
7月は授業も終わり、さまざまな体験をすることができた月でした。7月29日にノリッチの街で開催されたノリッチ・プライド(LGBTQIA+ のお祭り)にも参加しました。街中がカラフルなレインボーに包まれ、パレードやステージでのパフォーマンスが大変にぎやかでした。いろいろな幸せの形をお祝いできる、温かくそして心優しい場に参加することができて、うれしかったです。
残りの留学生活もあとひと月なので、楽しみながらイギリスの留学生活を満喫したいと思います。8月は卒論の完成や日本への帰国についてお伝えしたいと思います。
イーストアングリア大学について
イーストアングリア大学(University of East Anglia)は1963年に創立された、イギリスのトップ大学の一つ。多くの研究分野での高評価はもちろん、学生満足度が高い点でも知られています。教育・研究については「創造」を重視しており、2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏をはじめ、数多くの著名な卒業生がいます。
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